体験記│コミュ障の初めての恋-生きづらさとともに【第7章】

体験記 【第7章】心を食べて、心で生きる


《はじめから読む》clickme→

第7章~恋に染まる~

《目次》↓クリックで飛びます

第1話~大空に羽ばたく~

第2話~共通点~

第3話~星空~

第4話~曇天~


無題1373

第1話~大空に羽ばたく~

自分がコミュ障だった事を忘れさせてくれる

そんな存在に出会う……

新井優士は私にとってそんな人

車好きの彼は、私を連れて色んな場所に
ドライブデートに連れて行ってくれた。

ずっと、引きこもりだった事もあり……
今も人混みが苦手な私には、車のガラス越しに様々な景色が拝めるこの環境は最適だった

「白ちゃん大丈夫?疲れてない?」

彼は口癖のように問いかけてくれる

出会ってまだ数ヶ月しか経っていないのに
優ちゃんには私の過去を包み隠さず打ち明けることができた……

彼と一緒に居ると、いつも柔らかいベールに
包まれるかのような安心感と温もりを感じる
……
例えば、私が優ちゃんの車に乗る日は

決まって助手席側の窓が少し空けてあった

これは、私が車酔いしやすいのでと
1度言ったことを覚えてくれていたからだ

……本当に優しい人……

年上の男性をこんな風に思ったら怒られてしまうかもしれないが……
垂れ下がり気味の細い目が時々柴犬のように
可愛く見えて愛おしかった。
今日は、海辺をドライブしながら
偶然見つけたレトロな雰囲気のカフェで
休憩することにした……

カランコロン

「いらっしゃいませ」

二人は店内に入ると、窓側の木目調の四角いテーブルの上にメニュー表を広げて注文を決めた。

「ケーキセット2つで飲み物はアイスコーヒーと苺ミルクで」と優ちゃんが頼んでくれると
空いていたせいか、素早くコーヒーが彼の前に、苺ミルクが私の前に置かれた……

私達二人は、顔を見合わて笑いながら
いつもと同じように私の苺ミルクと彼の
アイスコーヒーを入れ替えた

優ちゃんは甘いものが大好きで
私は逆に甘すぎるものは苦手だった……
そんな、些細なやりとりが日常化するほど
彼とは親しくなっていた。

出会ってから3回目のデートで告白されて、
今に至る

家が近いこともあり彼とは毎日といっても
良いほど頻繁に会っていた

今年、25歳の誕生日を迎える私にとって
きっとこの人が最初で最後の人なんだと
確信していた。

7月の太陽は眩しい……

二人はカフェから出ると少し海岸沿いを
歩いた……
手には少し汗が滲んでいるのに、付き合ってからというもの毎日デートで手を繋いでいる

「手汗大丈夫かな?」
そう言って、優ちゃんはズボンで手を拭いた

「全然大丈夫だよ!」
……そんな事、気にしたこともなかった……

二人の時間は優しい色に染まり、穏やかに
通り過ぎていく

……こんな風に、ずっと離れずに

一緒に居たい……
どこまでも、どこまでも続いている広大な海を眺めながらポツリと願った……
海鳥が大空から見下ろす世界と同じくらい
今の私に映る世界は清々しさと煌めきで満ち溢れている。
 
ザザァーンという波の音だけが二人の間には
響いていた……
無題1479

第2話~共通点~

優ちゃんと付き合ってから半年、お互いの癖や性格がだいぶ見えてきた頃……
二人には共通点が多いことが分かった。

それは……

 
嘘が苦手なところ……
気を遣いすぎるところ……
甘えたなところ……
そして、落ち込みやすいところ……

ある日突然、毎日続いていたメッセージの
やりとりが一日中途絶えたことがあった
電話もかけたが繋がらない……

私は突然のことに居ても立ってもいられず
不安になり、彼の家まで訪ねようか迷った
ことがあったが……
とりあえず、1日我慢してからもう1度連絡をとってみることにした……

その時彼は、ごめんちょっと体調が悪くてと
答えると翌日にはすぐ元通りになっていた……

だけど、そんなやりとりは無くなるどころか日に日に回数が増えていく……

私もまた、そんな頻繁に訪れる不安感から
よく落ち込み情緒不安定になることもあった

それでも、二人で過ごす時間は幸せで……
あっという間に付き合ってから1年が経過していた。

そんな、ある日……母親から

「優士くんと付き合ってから1年だっけ?
そろそろ結婚とか考えたりしてるの?」
という、何気ない一言が放たれた……

就職して3年働いた会社を体調不良を理由に
退職してから……

私は今、フリーター生活なので母が心配するのも無理はない
「うーん…どうだろう?分かんない」

「真白も、そろそろ良い年だしねー
まぁ、慌てなくても大丈夫だけどね!」

「う……うん」

私は、優ちゃんと一緒にいる時間が楽しすぎて一瞬現実を忘れそうになっていた。

……優ちゃんとは一生一緒に居たい……
私は体の一部と同じくらい
優ちゃんの存在が大切なものになっていた

翌日……

彼の部屋の白いソファーで一緒にくつろいでいた時……私は突如、口を開いた。

< div id="02">
「優ちゃん!」

「ん?何?」

「私ね……優ちゃんとこのままずっと一緒に

居たいと思ってるよ!」

部屋の中には妙な沈黙が一瞬流れたが……
少し間を空けて、彼は私から目を逸らすと
「うん、僕も一緒に居たいと思うよ」
と答えた。

人は、自分の良いように解釈したくなるものなのかもしれない……

私の表情は分かりやすくパアッと明るく
なって、ぎゅっと優ちゃんの腕にしがみつきながら

「じゃあ、いつ頃結婚する?」
そう言って、彼の方を見た。

だけど、私が想像していた彼の表情はそこにはなく……

困惑したような、後ろめたいような
そんな難しい顔をしていた
ドクンドクン……と胸の真ん中が痛み出して
発作的に辛かった過去に戻ったかのように
全身から温もりが消えていく感覚と不安感が心を渦巻く

「優ちゃ……」

「そうだね!ゆっくり考えていきたいね!」
そう言って、私の気持ちを察したかのように
笑顔で答えた。

その日から些細な違和感が拭いきれないまま
ただ、今この瞬間の時間だけを意識して
思いっきり笑い明かした

恋とは、今この瞬間だけを
楽しむものなんだ……

そう、思った。
今日が楽しい!それだけが今の私の全てだ

大切な人を失いたくない……

私の心の裂け目は透明の糸で綴られたけど
縫い目からは時々痛みが染みていた

開くことがないように……

私はそれを守るように
見たくないものに蓋をした。

だけど、お互いの苦しみに目を逸らさず
2人で現状を乗り越える……そんな愛を
育むことができない恋に永遠など無いことも分かっていた……

無題1479




第3話~星空~

今日は、優ちゃんと夕食を二人で食べた後
夜景を見に行くことになった。

優ちゃんオススメの場所らしい……

季節は夏から秋にかわり、車の窓の小さな
隙間から入ってくる風が冷たく肌に触れる

「白ちゃん、山道だけど大丈夫?」

「うん!大丈夫、ありがとう」

相変わらず優しいそんな彼の運転する横顔をじっと眺めていた。

「もうすぐ、頂上だよ」

「うんっ!」
トンネルの中に入ったような耳の違和感を
少し感じる……

それから、二人は車を頂上に停めて歩いて

展望台まで登ると……
 
眼下には、この世のものとは思えないくらい
幻想的で美しい夜景が広がっていた。

少し大袈裟な表現に思われるかもしれないが……

長い間、家に引きこもっていた私にとって
これほど綺麗で心が震えた景色を見たのは
生まれて初めてだったので……
涙が流れるくらい嬉しかった……

今まで、数え切れないくらい辛い思いをして

泣いたことはあったけど……
綺麗なものを見ただけで、泣きそうになったことはなかった……

2人の白い息が空に舞い上がる

……ぎゅっと、繋いだ手が永遠に

離れませんように……

そう願いながら

ずっと、ずっと……二人は

その景色を焼きつけるように
ただ、じっと眺めていた。
無題1479

第4話~曇天~

優ちゃんと出会ってから、もうすぐ2年……

私の部屋は、優ちゃんからもらった猫の縫いぐるみや思い出の写真で埋め尽くされていた。

今、誰かにあなたは幸せですか?という質問を投げかけられたら

私は間違いなく即座に「幸せです!」と
答えるだろう……

1度、死ぬような経験をした私にとって
普通に息ができることですら

幸せに値するのに……

今を幸せと言わずに何を幸せと言うか!
神様が本当に居るのなら
そうお叱りを受けるだろう……

そんな、毎日笑顔で過ごすようになった私を見ながら家族もまた自分の幸せのように
喜んでくれていた……

庭では、飼い猫のマルがお腹を空かせたのか
タンポポの黄色い花を口に咥えて食べようとしている

マルは私を見つけるとタンポポを投げ捨てて
「ニャー」と一鳴きしてから一目散に
駆け寄ってきた。

……みんな……マルちゃんもありがとね……

そんな風に一人思いながら、生まれてから
ずっと変わらない家族皆で過ごした庭を
ボーッと眺めていた。

今日は、午後から優ちゃんと出かける予定が
入っている。

……雨、降らないと良いな……

所々、空には黒い雲が広がってきている……
私は出かける前に鞄に折り畳み傘を入れると

「行ってきます!」
そう明るい声で言い残し、見慣れた庭を
後にした。

……今日も優ちゃんと一緒に居られる……

心がポカポカ温かかった。
無題1479





第5話~雨~

優ちゃんの白い車は家の前に停まっていた

「優ちゃん!お待たせ」
私は、駆け足で助手席に乗り込んだ

「大丈夫!全然待ってないよ」
そう言いながら彼は相変わらず優しく笑った

車の中には私の好きなレモンティーと
優ちゃんの好きなココアの小さいペットボトルが二つ並んでいた

「いつも、ありがとね」

「うん」
そんな何気ないやりとりで私の心はホッコリと温もった

二人の行く先を彼のハンドルに託して
車はゆっくりと進み出す

「今日はどこに行くのかな?」

「うん、二人の思い出の場所に行こうと
思って……」

私はこの時、少し嫌な胸騒ぎがしていた……

数十分ほど車を走らせて向かった先は初めて優ちゃんと語り合った場所   あの、カフェだった……

それから、二人は何事もなかったかのように食事をしながら思い出ばなしに花を咲かせていると……チクタクと時間は過ぎていった   再び車に戻ると、いつもなら
「次はどこに行きたい?」と尋ねてくる彼が今日はそのまま直行で家の前まで私を送り届け、車のエンジンを停めると…… 一人悩ましい顔をしながら沈黙した。

「優ちゃん……どうしたの?」

「あのさ……あれから二人の将来について
真剣に自分なりに考えたんだ」

「うん……」

「結論から言うと、、」

ドクンドクンと再び私の心臓が大きく揺れ
まるで血を吸いとられていくかのように
一気に体温が抜けていく

「僕達、もう終わりにしないかな?」

私は、その言葉が上手く飲み込めなくて
しばらく青ざめた顔で固まっていた……
まるで体の一部が切り取られたかのような
激痛が心に走る

「やだ……絶対嫌っ!嫌だから」

今にも泣きそうな声で私が叫ぶと
それ以上に泣きそうな表情で優ちゃんは
「ごめん」と呟いた。

彼の理由はこうだった……

1年間を通してお互いを知る中で、僕のような弱い人間では将来を通して白ちゃんを守り抜くことができない……

それどころか、時に僕のほうが白ちゃんの
心の負担になることもあるかもしれない

二人が幸せになる為には、どちらかがもっと強くなるしかないと思って僕なりに努力はしてみたけど……
やっぱり、そう簡単には治らなかった。

似た者同士の僕等が一緒になるということは
……そう、途中まで言うと声を詰まらせて

「ごめん、もっと君を幸せにできる人は
他に居ると思う。本当にごめん」と目に涙を浮かべた

私は、しばらくショックのあまり声が出なかったが……怒りのような悲しみのような言葉にならないほど複雑な感情が湧き上がってきて
「分かった」と低い声で一言発すると
助手席のドアを「バンッ」と激しく閉めて
降りしきる雨の中、傘も差さずに飛び出した…… 鞄に入ってある折り畳み傘の存在など忘れるくらい、感情が高ぶっていた。

……優しい彼のことだから……
そんな、期待感があったのかもしれない……
少し歩いてから振り返ると、エンジン音と ともに彼の車は私とは反対方向に進み出していた。 ……嘘だ……

優しい彼が雨に濡れながら泣いている私に
温かい手を差し伸べることをしなかった……

更に激しく雨はザアーーッと私を叩きつけた

……もっと、この雨に打たれていたい…… そう思うほどに、心の縫い目からはズキズキと刺すような痛みが鳴り止まなかった……

無題1479

第6話~別れ~

私はびしょ濡れになったまま部屋に一人
閉じ隠った……

そして、ベッドに横になりながら
優ちゃんの言葉を繰り返し、繰り返し思い出しながら私なりに一生懸命考えていた。

……優ちゃんの言いたいことは分かる、私も同じように考えたことが何度かあったからだ…… だけど、その度に見ないようにしてきた……

私達は、将来家庭を築いていく上で重要な
二人で“支え合う”ということができない……

なぜなら、私も優ちゃんも心が弱いからだ。

お互い支え合いながら強くなっていくというのは、少なからずどちらかが相手より少し
心に余裕があること前提だ。

この1年一緒に過ごして分かったが
優ちゃんもまた、私と同じくらい心に闇を
抱えている……

二人は一緒にいても更に闇を深め合うことしかできないだろう……

あと少し時間があれば(出会ったのがもう少し若い時なら)どちらかが少し前向きに強くなるまで待って結婚するという選択肢はあったのかもしれない……

だけど、出会ったタイミングも含めて
二人の運命なのだろうと思った。

私の中でも答えは出ていたのに……

今は辛くて苦しく
て一晩中泣き明かした。

次の日……   私は、電話でしっかりと彼と話し合った……

「優ちゃん……私達、道は違うけど一緒に幸せになろうね」 「ありがとう…… 白ちゃんと出逢えて本当に良かった」 優ちゃんが電話越しでも泣いているのが 分かった……

……私も……私もあなたと出逢えて本当に
本当に良かった……

……さよなら……。

電話を切ると再び大泣きした
本当なら直接会ってもう一度話したかった

だけど、弱い私達のことだから……
会ったらまた離れたくなくなる
絶対離れなくなる
そんな気持ちはきっと二人とも同じだった

会いたい……

でも、会わない……

1週間くらい、ご飯が喉を通らなかった……

だけど、部屋に飾られている二人の写真は
眩しい笑顔のままで
私にここまで笑顔で過ごせる時間をくれた
初めて恋を教えてくれた彼に

ただ、ただ、ありがとうという五文字しか
浮かんでこない……

……私、もっと変わらないと……
そう強く思えたのは
今でも彼のおかげです。

……ありがとう……





第7話~見つめ直す時間~

25歳になった私はだいぶ人より遅れて
初恋そして、失恋の痛みを知った……

だけど、人間らしい暮らしがずっとできていなかった私にとってこの1年間は
全部引っくるめて幸せな思い出、そして
良い人生経験となった。

今となれば、早めに別れを告げてくれたのは
彼なりの優しさだったのだと理解できる……   あれから、立ち直るまでに更に1年経過した……ある日

私は、ベッドの上に寝転びながらピンクベージュのメモ帳を開いた

再び、この時点で私は優ちゃんとの関係を
客観的に見直してみた

自分の駄目な所をノートに書き表し
その欠点を治す為には何が必要か?を
自問自答する。

例えば、優ちゃんに依存していたこと、
それを治さなければ次の恋もまた同じ結果になる、だから私は自分の時間、趣味を見つけることにした

少し音楽に興味があったのでギターの勉強をしながら近くの音楽サークルに参加すること!とにかく絶対友達を作ること!
これが今年の目標だ。

後は、コミュニティケーション能力を高める為の参考書などを暇があったら読み漁りながら……いざ実戦に向けての下積みをしていた

何より、何かをしているほうが
辛い気持ちが紛れたということもある……

だけど、止まっている時間の恐ろしさを知っているからこそ
今……前を向いて自分のできること、必要なことを見極めて的確に努力をすることが大切だと思った。

数ヶ月間、独学でアコースティックギターを
学んでみたが…… 初心者が良く躓くというFコードに案の定苦戦して、綺麗な音が出るまで何度も何度も指で押さえる練習を繰り返した。 まだまだ、ピックを握って一曲何か弾けるまでには至らなかったが……
1度死の淵を味わっていた私は
「100%明日があるとは言いきれない」
という精神でとりあえず行動に移すことを
決めた!

学生時代のような絶望感はない……

悲しみはあるが、しっかり前を向いて
歩こうとする自分がいる

今この瞬間の時間が戻ることは2度とない

だからこそ、今やらなければいけない
ことがある……

私は人より何もしない時間を多く
使ってしまった……
だから、今はただ進むんだ

そんな風に思えるのは、私がずっと苦しみ抜いた辛い時間が存在したからこそ思えること 結局、全ての出来事が今の私を作っている
無駄な時間などなかった……

……私はもっと、変われる……
そう、信じて突き進む

無題1479

第8話~始まりの音~

電車で1駅、そこから徒歩20分ほど住宅街から離れた場所にぽつんと建っている古民家でサークルの練習は行われていた。 私が一人トコトコと歩いていると少し離れた場所からでもギターやピアノなどの楽器音が小さく聞こえてきた……

コミュ障の私は緊張しながら唾を飲み込んだ

…コミュニティに上手く馴染めるだろうか……そんな一抹の不安が頭をよぎる

………大丈夫、大丈夫、きっと大丈夫……
自分に何度も言い聞かせた

古民家の開き戸を「ガラガラッ」と開けた

ドクンドクン……

「すみませーん」

そう、小さな声で呼びかけたが
誰も気づかない

「すっ、すみませぇぇ″ぇん」
少し緊張から声が裏返ってしまった

その時、、、

「はい?あっ君今日から参加してくれる子」
と少し笑いながら玄関に出てきたのは
黒縁メガネをかけていて中肉中背の明るそうな男性だった

「上がって!上がって!」
そう、言って手招きしながら
私を古民家の一室に案内してくれた

その、一室では数人の男女が
アコースティックギター、電子ピアノ
ベース、打楽器などの楽器を演奏していた。
年代はバラバラで20代~70代までと幅広い
男女比は半々くらいだった。

思い切った行動をしたものの、私はまた新しい扉の前で少し萎縮して立ち止まっていた

そんなことはお構いなく、部屋に入るとすぐに簡単な自己紹介が始まった

私を含め部屋にはこのサークルのメンバー8人全員が集合している……

まず、始めに私を出迎えてくれた
このサークルの主催者らしき人が口を開く

「長峰です(30代男性)
主に、音響設備の管理やサークルの運営をしてます!よろしくぅー♪」テンションの高い声を張り上げながら周りを笑わせた

パチパチパチパチ……

「じゃあ、年功序列でいきましょうか♪」
と長峰さんはこの中で一番年上であろう
夫婦にすっと掌を差し出して合図した。

「湯川です(70代)夫婦 二人でこのサークルでアコースティックギターを演奏させてもらっています。よろしくね!」
そう、白髪のお婆ちゃんが言うと、隣の旦那さんらしきハット帽を被ったお洒落なお爺ちゃんが

「孫みたいな存在が増えて嬉しいよ」と言って、ニカッとすきっ歯を見せながら微笑んだ パチパチパチパチ

「瀬田と申します(40代女性)電子ピアノを
担当しています。分からないことがあったら何でも聞いてね」
少し、自分の母親の昔の面影を感じさせる そんな優しそうな人だ パチパチパチパチ

「ベースの高坂です(20代女性)
よろしくお願いします」と淡々とした口調で 喋るのは同い年くらいの細身な女性 どこか、クールな印象を感じた。

パチパチパチパチ

「山本です(30代男性) 打楽器を担当しています。若くて可愛いらしいメンバーが増えて
嬉しいよ!今日の夕食はご飯大盛り三杯は
余裕だな~」そんな風に戯けると、メンバー全員がドッと吹き出すように笑った   そんな、優しそうで少しぽっちゃりとした
ゆるキャラ系の男性だ。

パチパチパチパチ

「赤西です(20代男性)ボーカルメインで
時々ギターも弾きます。よろしく」
赤西くんは20代前半くらいの男性で
私より年下、端整な顔立ちをしていて……
いかにもモテそうなお洒落な子だ

パチパチパチパチ

「じゃあ、新人さん自己紹介よろしくー♪」
そう言うと、長峰さんはニカッと笑いながら私を見た……