体験記│見えない障壁を乗り越えるまでの人生を描いた小説

 

人付き合いが同じく苦手な人

何らかの理由により孤独感を感じている人が
この小説を通して
辛い経験も共有することで
少しでも気持ちが和らぎ
何か伝わるものがあれば幸いです。

私もまた、根っからのコミュ障、人見知りで
よくポツンと独り過ごすことの多い
人生でした……

そんな私が、信頼できる友達に囲まれながら

春には桜の下で皆でお花見
夏には川辺でわいわい♪バーベキュー
秋には皆で紅葉の中ピクニック
冬にはコタツに潜り込み温かい笑顔に
囲まれながら、ホカホカお鍋など
無題1488

孤独な生活から一転!
今の私の周りは優しい人で満ち溢れ……
幸せな気持ちに包まれています。

そんな、見えない障壁による生きづらさから気持ちを病んだ私の
辛い体験談がストレートに心に伝わるような小説として
人生が変わるまでの永い道のりと
自分との葛藤を描きつつ

時には可笑しく、時に切なく
そして時にはちょっぴりホッコリするようなエピソードを交えてお届けしたいと思います

 

体験記「心を食べて、心で生きる」

一章 独りぼっちの白ちゃん

《目次》↓クリックで飛びます

第1話~幼稚園入園~

第2話~出会い~

第3話~トンボ~

第4話~扉の鍵~

 
 
 
第1話~幼稚園入園~

ヒラヒラと桜が舞い、甘い香り漂う季節

「ギャーギャー」まるで小さな恐竜のように
泣き叫びながら

母の元から引き離され、幼稚園に連行される桃色の帽子を被った女の子が一人。

光野 真白 (ひかりの・ましろ)仮名 3

母から聞いた話しですが……
当時の私は、他の園児と比べてもかなり小柄な方で、幼稚園の遊び着の一番小さいサイズで袖が指までスッポリ覆うほどでした。

私の幼稚園は、1クラス30人
桃色の帽子うさぎ組、水色の帽子クマ組
黄色の帽子ヒヨコ組、黄緑の帽子リス組の
4クラスに分かれています。

幼稚園に入園した当初から
周りと上手くコミュニケーションをとることができず、一人クラスの隅っこで
積み木を重ねては壊し
再び積み重ねては壊しをリピート……

先生はそんな私を見かねて
本当に良く寄り添ってくれていましたが……

何故か、全く友達ができませんでした。

積み木と戯れている間に1年が過ぎ……

そんな私もあっという間に
幼稚園年長さんへ!

この当時、私の好きだった遊びは
幼稚園の砂場でひたらすら黄色いスコップを握り、カブトムシの幼虫を見つけること
でした……。

その、小さく丸まって
真剣に穴を掘る後ろ姿からは
モグラの面影すら感じさせます

家に帰ったらお母さんに報告しよう!

そんな風に一人考えながら
白くてうねうねした幼虫を
探し続けていました。

年長さんになって、周りの子供達は少しずつ変化していきます

クラスで少し浮いた存在の私は、その頃から狐目の女の子3人組のいじめの標的にされるのでした……

いじめと言ってもまだまだ幼稚園児
可愛いレベルのものではありましたが……

当の本人にとっては、とても傷つくもの
には違いありません

私が、少し一緒に遊びたそうに近づいて
行くと……
「真白ちゃんにはオモチャ貸してあげない」

「行こ~」

クスクス……
と、プイッと尻尾を向けて立ち去られて
しまいます。

そんな、女の子数人を横目に部屋の隅っこでポツリと丸こまり、影を落としていました。
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今はまだ、笑いかけてくれるのは
お昼のお弁当箱をパカッと開けた時
中でそっと微笑むア◯パンマンポテトだけ……

それを口に頬張り
午後からの元気を注入して
夕方お母さんに会えるのを楽しみに頑張る!

そんな、この先がとても心配な
真白ちゃんなのでした。

第2話~出会い~
 

真白ちゃんは今日も相変わらず
クラスの隅っこで一人丸まっていた。

しかし、その日は突然訪れました!!!

私にとって
天使のような存在が舞い降りてきます……

天音ちゃん5歳
背はすらっと高く端整な顔立ちで誰からも
好かれるようなタイプの優しい子でした。
そんな子が私が一人でお絵かきしている隣にやってきて

「それ何書いてるの?」
と、喋りかけてくれたのです!

私は少し照れながら小さな声で
「かっ……カメだよ」
と答えました。

この年代の女の子なら多くは
ツインテールでお目々クリクリの女の子や
綺麗なお花などの絵を書きますよね?
何故カメを書いていたのか……

自分でも少し謎でしたが……

天音ちゃんから返ってきた言葉は
意外なものでした。

「可愛い虹色のカメだね!」
とにっこりと笑って、歩み寄って
来てくれたのです

今まで、自分から歩み寄り避けられたことは
ありましたが……
こんな風に誰かから好意的な眼差しで
話しかけられたことはなかったので

胸が高鳴るような、温かくなるような
そんな気持ちがジンワリ湧き上がった記憶を今でも覚えています。

「天音のお家にもカメが居るんだよ!」

「そうなの……」

「凄く小さくて可愛いの!」

「うんうん」

「このカメは何ガメ?」

「う~ん。分かんない」

「そうなんだ!アハハ」

と可愛いく笑いながら同じ画用紙の端に
自分の家に居るカメを描いてくれました。

そんな、小さなことがきっかけで
二人は仲良くなります

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天音ちゃんと仲良くなってからは
幼稚園に通うことを嫌がらずに
すんなり母の元を離れ通えるように……

一人で迎える春夏秋冬より
二人で迎える春夏秋冬
それは……
景色の彩が全く異なって見えるということ

春のお花見、夏の川遊び、秋の栗拾い
冬の雪遊び、全ての幼稚園のイベントが
こんなに楽しいものだと初めて知りました。

今日も、フジの花が滴れる砂場には
寄り添うように丸くなった小さなモグラが2匹
力を合わせて穴を掘り進みます…… 
      

 
 
 
 
第3話~トンボ~

あれから、時は流れ……

天音ちゃんと出会った幼稚園年長組から
小学校の6年間は、天音ちゃんを通すことで
クラスの仲間とも少しずつ話せるように
なりました……

そんな私が、小学校1年生の時のちょっとした
出来事。

ある日、クラスのやんちゃな男子が
私の目の前に捕まえてきたトンボを差し出しこう言った

「ちょっと見てて」

「えっ?何?」

私はその男の子が指で羽を掴んで、ジタバタもがいているトンボを見つめた

「可哀想だよ。離してあげなよ」

珍しく私はその男の子に意見した

「やだね!!」
そういって男の子は、デコピンするような
指の仕草をした

「こうやってトンボの頭にしたら
どうなると思う?」

私は、一瞬でその意味を理解した

「やっ、やめてあげて!」

そう言って、私が焦ったようにすると
余計にその子は面白そうに笑って

「今からトンボの頭を飛ばしま~す」

「5…4」
とカウントをはじめた

「ちょっ、本当にやめてあげてっ!」
私は、少し声を荒げながら
泣きそうな声で止めたが
男の子はニヤニヤ笑っているだけだった。

「……3.2.1」

ピシッという鈍い嫌な音と共に
トンボのクリクリした2つの目玉が地面に
コロンと転がり落ちた。

子供とは残酷なものだ……

だが、予想とは裏腹に
顔の無くなったトンボは男の子が手を離すと
パタパタとまるで何もなかったかのように
大空に羽ばたいていった

「バーカ!」
「アイツはこのくらいじゃ死なないよ!
と言うと、男の子は次の新しい遊びを見つけて走り去った。

私は、その時の光景が今でも強く記憶に
残って
いる。

トンボは何故、頭がなくなっても飛ぶことが
できたのか?生きることができたのか?
痛くなかったのか?涙は出ないのか?

そんな疑問や感情の意味を知るのは
まだずっと先のこと……
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第4話~扉の鍵~

 

その時は突然訪れました。

 

「真白ちゃん。私お父さんの仕事の都合で
遠くの学校に転校することになって」

「えっ!」

「だから、中学は一緒に行けない」

一瞬、頭が真っ白になって
天音ちゃんの方をただ見つめ返しポツリと
出た言葉は一言だった。

「そうなんだ……」

天音ちゃんは申し訳なさそうに
「ごめんね」と呟いた。

天音ちゃんの周りの友達は皆
寂しそうにしながら天音ちゃんを囲っていた

私は、少し離れた所でそれを見つめながら
天音ちゃんの心にずっと私が住みつづけられることを願っていた。

天音ちゃんは最後に友情の印だと言って
鍵の形のキーホルダーをプレゼントして
くれた。
その鍵でいつか、自分の心の扉を開けなさい
と言わんばかりに……

数十年たった今もそれは私の宝物だ。

無題1348

数カ所後
天音ちゃんは私の前から姿を消した。

手紙はしばらくすると途絶えて
しまったけど……

あなたと過ごした時間は永遠に
私の心の中で温かい鼓動を刻んでいる

夕暮れ時に眺めた空は美しすぎて
心が吸い込まれそうになる……

そんな、私を鴉の鳴き声が呼び戻す
足元の小さな影がポツリと
水玉模様を描いていた……

古びた赤いランドセルはもう使うことは
ないだろう……さよなら……

そして私は、中学生という名の
子供と大人の狭間
細い糸のように繊細で

 
集団という正義の名の下に
まるで虫歯のようにジワジワと心を蝕んで
知らぬ間に、神経まで貫通させる…
そんな、黒い青春の扉を
一人開けた……

誰かの面影を探すように…

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