【体験記】コミュ症女子の中学時代│生きづらさとともに 第2章

体験記【第2章】心を食べて、心で生きる

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第2章 ~中学という名の~

《目次》↓クリックで飛びます
第1話~中学入学~
第2話~二人の始まり~

第3話~二人の秘密~

第4話~星のペン~

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第1話~中学入学~

新しい扉の入口にはいつもヒラヒラと
同じ花が舞い散る
4月はじめ、新しい制服を身に纏い
ツンとした少し冷たい朝の空気の中
私はそこに立っていた

 

少し、年季の入った校舎はどこか不気味
で恐怖感にも似た緊張感を感じた。


入学式が終わり、1年3組のクラスに入った
私は新しい友達ができるのか心配で
ソワソワしていた。

私の中学は、小学校からの友達も
一緒に
入学することになるが

別の学区2校の子達とも一緒になるので

ラスは、少し顔見知りな子と
全く知らない子で溢れかえっていた。


天音ちゃんの周りの友達が喋りかけてきて
くれるかもしれない……と
少し甘い期待をしたが、実際には
そんなことはなく

少しクラスの中で浮いたまま
ポツンと席に座り、誰とも喋ることなく
数日が過ぎてしまった……。

その間に喋った会話といえば、
前の席の子
から回ってきたプリントを受け取り
「ありがとう」と呟いただけだ

自分のコミュ障ぶりが本当に嫌になる……


クラスの子達は、少しずつ仲の良いグループ
に分かれ始めていた。


そして、今日……

このままでは、中学3年間ずっと
独りぼっちになってしまうという焦りから


一大決心をつけて、自分から前の席の子に
話しかけることを決意する!

心臓がはち切れそうな思いで
息を吸って、吐き出した…… 




「先生の話、長いし疲れちゃったね……」
そんな、他愛もない一言を投げかけた

前の席の子の名前は、望月 砂希(さき)

中学1年生にしては少し目立つ薄茶色に
髪の毛を染め、大きな目が印象的だった。

入学してから数週間……

一番目にする機会の多かった子だ



心臓がいつもより大きな音でドクンドクンと
高鳴っている

砂希はその大きな瞳で少しの間私の顔を
チラッと見てから

一瞬、目を逸らして

「そうだね~もう疲れちゃったよ」
とニコッと笑いかけてくれた

「光野さんって○○小だっけ?」

「うっ、うんそうだよ!望月さんは?」

「○○小だよ~あんまり仲良い子と同じ
クラスになれなかったから、寂しくて~」

「私も!私もそうなんだ」

仲の良い子といっても私の場合は転校した
天音ちゃんしか居なかったのだが……

「良かったら仲良くしてね」
そういって私は少し照れながら顔を伏せた

「うんうん!よろしくね!」

中学に入って初めて友達ができた瞬間でした

この時、私は嬉しくて本当に嬉しくて

自分から声をかけたことがきっかけで
友達になれた存在を絶対に大事にしよう!
そう、強く強く心の底から思ったのです

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

頭に響くようなチャイム
の音と共に

そんな二人の友情は今、始まったばかり
「光野さん!
 次、移動教室だから一緒に行こう」
「うん!」
そう言って、私は微笑んで
椅子から立ち上がった

教室の窓からは温かい光が差し込んでいた。

未来は輝いている……

私はその時、そう信じて疑わなかった

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第2話~二人の始まり~
砂希ちゃんと仲良くなってから数週間
私の周りは、みるみる明るく変わりはじめた

今までは、緊張しながらそっとクラスに入り静かに自分の席に座る日々だったが

毎朝教室に入ると……

「おはよう!白ちゃんっ」

と、砂希ちゃんを中心に周りのクラスの女子も声をかけてくれるようになった

ちなみに「白ちゃん」とは私のあだ名だ

そんな、当たり前の日常が本当に幸せで
嬉しかった。

中学に入学してから、1か月

すっかり私のクラスにもグループができ
私は砂希ちゃんと砂希ちゃんの友達の
七絆(なずな)ちゃんと3人で
いつも過ごすようになっていた。

砂希ちゃんは可愛くてお洒落で人気者
七絆ちゃんは3人の中で一番背が高く
運動神経抜群のしっかり者

そんな、二人にのいる私のグループは
いわゆるスクールカーストで例えるなら

最上位、普通、普通より下、最下位に分けるとちょうど普通くらいに位置していた。

最上位は、少しやんちゃ系な子
ギャルっぽい子……
最下位が、地味でオタクっぽい子など

あまり意味の分からない、カースト制度だが
それは、確かに存在していた。

だけど、人類は古くからこのカースト制度の中で生きてきた
神の位、王族、庶民、奴隷など
今の社会でも目には見えにくくなっただけだ

私はこのカースト制度という思想が
大嫌いだった。
同じ人間に人間が価値をつけるなんて……

でも、私はまだそんな気持ちを
言葉にして表せるほど強くはない。

必死で、ただ必死で自分を守りながら
1日、1日を過ごすだけだ……

「白ちゃん!お昼食べよう」
明るい声で呼びかける砂希ちゃん

「うん!」

そう言って、砂希ちゃんと七絆ちゃんと
私は席をくっつけて座る

「えっ、白ちゃんのお弁当小っさ!」
と七絆ちゃんが声を上げた

「そうかな?」

「もっと、食べないと大きくなれないよ」

「七絆ちゃんの身長分けてほしいよ…」

「アハハっ」

そんな他愛もない会話と笑い声が
教室に響く

そんなやりとりを3人でしている時
机の下からそっと砂希ちゃんが私に
手紙のようなものを差し出した……

その手紙は
「今度の日曜、二人で遊びに行こう」
というラブレター

私は、一人ニヤけながら
初めて砂希ちゃんと学校の外で遊べる事が
嬉しくて、胸が躍っていた。

キーンコーンカーンコーン……

何かをしていても……
何もしていなくても……

笑っていても……泣いていても……
あっという間に1日は終わる。

バイバイ!また明日」

「また明日ね~」

そう言って手を振り合うセーラー服姿の
中学生を見ると今でも思い出す。

放課後、教室の窓から差し込む夕日
黒板に書かれた白い文字の日付
古びた壁には画鋲の穴が無数に残る
そこに、ポツリと教卓の黒い影が滲んだ 

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第3話~二人の秘密~

日曜日、正午1時、駅の時計台の前で
二人は待ち合わせをした。

スラッとした足によく似合う
スキニージーンズにパンプス
その時代の流行りのブランドのシャツを着て耳には可愛いイヤリングをつけた姿の砂希はいつも以上に華やかだった

私は、いつもの同じみの履きつぶした
ジーパンにスニーカーと自分の中では
お気に入りのチェックのシャツを封印して

最近買った、お洒落なファッションで
向かった。

この頃になると
人は見た目も大事だということを
重々、認識するようになっていた。

「やっぱり私服だと
いつもとイメージ違って何だか新鮮だね!」
私がそう言うと

「思ってたより
白ちゃんってお洒落なんだね!」
と砂希はニコッと微笑んだ……

やっぱり、お洒落してきて良かったと
ホッと胸を撫で下ろした

その後は二人でゲームセンターに行って
初めてプリクラを撮った

は~い♪チーズ♪

カシャッ

「あっ私、目が半開きだ!」

「アハハ、白ちゃん可愛い~」

ハートやラメのスタンプでデコレーション
した写真に二人の名前が並ぶ


度も何度も鞄の中からプリクラを取り出し見返しては、幸せな気分になった。

「砂希ちゃんって可愛いよね!」

「そんなことないよ!白ちゃんも可愛いよ」

「それは、あり得ないよ」

「なんでよ~」

二人はそんな話しをしながら
美味しいスイーツで有名なカフェに入った

「じゃあ、私は苺パフェで」

「じゃあ私も同じで!」

と言うと砂希が、別々のものを頼んで二人でシェアしないかな?と言ったので

「やっぱり、チョコレートパフェで」
と頼み直した。

「ありがとう」

「うううん!確かに砂希ちゃんの言うとおり
別々の頼んだ方が2種類味が楽しめるもんね」
そう言って、首を横に振った

「白ちゃんってさぁ……
前から思ってたんだけど」

そう言って私の方を見つめた砂希の視線に
ビクンッと心に何か一瞬走ったように
体温が下がった

「えっ!何?」
私は少し不安気な顔をして尋ねた

「うん、本当に白ちゃんって
優しいなって思って」

…なんだ、そっか……

その一言を聞いて、心はまた穏やかな音に
戻っていった。

「そんなことないよ
砂希ちゃんの方が優しいよ」

「ふふっ」

そう笑って、肘を机につくと
再び私の方を見た……

「実は、ちょっと白ちゃんに相談があって」

「えっ、何?何?」

「私、最近あることで悩んでて……
白ちゃんにしか相談できなくてさ」

「うん、うん」

正直、砂希ちゃんみたいに
クラスでも人気があって明るくて可愛い子が
私だけに悩みを打ち明けてくれることが
嬉しかった。

「白ちゃん、七絆ちゃんってどう思う?」

「えっ、どうって何が?」

「なんかさ、ちょっと口調とかキツくない?
私、正直苦手なんだよね」

「あっ、えっ、そうなんだ……」

それは、少し意外な言葉だった
二人は誰から見てもかなり仲よしに見えるし
砂希ちゃんとの付き合いだって小学生の時からだし、私より長い。

「なんかさ、いつも命令口調じゃない?」

私が返答に困ったような顔をすると

「白ちゃんは優しい子だし
そんなこと思わないか……」
と小さくため息をついた

その場の楽しい空気は一瞬でどんよりと
した空気に変わったことを察した

このままじゃ駄目だ……
私の弱い心がそう叫んでいた

「でも、私もそう思う時あるよ」
気がつけば砂希ちゃんの言葉に同調していた

「えっ、本当に!やっぱり私だけじゃ
なかったんだ~良かったぁ~」

そう言うと、さっきまでの明るい表情で
笑ってくれた

それと同時に注文していたパフェが
テーブルに運ばれてきた

「うわぁ~美味しそう!」

「そうだね~」

「白ちゃん今日は来てくれてありがとうね」
そう言うと、
お姉ちゃんが妹に食べさせるかのように
苺パフェを私の口元に差し出した

「あ……ありがとう」

友達から
こんなことされたのは初めてだったので

恥ずかしいような
嬉しいような気持ちになった……

「えっと、私のも先に食べて良いよ」
とまだ綺麗なままのチョコレートパフェを
砂希のほうに差し出した

「え~。私にはあ~んしてくれないの?」

そんな恋人同士のようにふざけ合った関係も悪くないなと思った。

それから、たくさん二人で話をした
昔飼っていたペットの話、小学生の時の話、家族の話、初恋の男の子の話……

そんな楽しい時間は
あっという間に過ぎ去っていく……

駅前の時計は正午5時

「白ちゃん!また、明日学校でね」

「うん、また明日」
二人は笑顔で手を振りながら別れた

私は家に帰り部屋に入るとすぐに
ベッドに寝転び、天井を見上げながら
お揃いで買ったシルバーの星のチェーンの
着いたペンを眺めていた……

……早く明日にならないかな……

中学に入学してから、初めて学校が楽しみになった瞬間だった

その日の夢は、沢山の友達に囲まれながら
笑っていた……

ふわふわの白い羽が舞い
甘い香りがする空間で
大きなヒマワリの太陽に照らされながら
私は踊っていた……    

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第4章~星のペン~

紺色のセーラー服は、夏服の白色に変わった
少し太陽の暑さを感じるようになった季節

「白ちゃんおはよう!」

「おはよう砂希ちゃん!」

「ちょっと来て来て」
そう言って砂希ちゃんは手招きした

「ん?何」

「制服の襟が折れてるよ」
そう言って私の襟を直してくれた

「ありがとう」

「仕方ないなぁ~白ちゃんは」

その横から七絆ちゃんが登校してきた

「おはよう!砂希、白ちゃん」

「おはよ~」
二人の声はぴったり揃った

「仲が良いねぇ~お二人さん」

私と砂希ちゃんは顔を見合わせて笑った

「そうそう、七絆にラブレター」

「ありがとー
 何?何?プリクラ入ってるの?」

「そうだよー」

「昨日、白ちゃんと二人で撮ったんだ~」

「……………………。」

二人の間に妙な空気が流れて、一瞬沈黙した
私はとっさに

「七絆ちゃんもさ、今度一緒に行こうよ」
とフォローを入れた。

「プリクラなんて、ずっと撮ってないしね」
そう言って、七絆ちゃんの顔に少し笑顔が
戻った。 

キーンコーンカーンコーン

1時間目が終わり、少し一息をついていた私に前の席の砂希は振り向いて

「この星のシャーペン書きやすいね」
と笑った

「うん!本当に!」

二人は、お揃いの星のペンを見せ合っていた

そこに、少し離れた席の七絆がやってきた

「……。」

「七絆、そこ座ったら?」
と隣の空いた席を指さした

「うん……。私ちょっと
職員室に用事あるから行ってくるね」

「分かったー」
そう言って砂希はにこやかに笑った

私は昨日の砂希ちゃんの発言のこともあり
何だか悪いことをしているような気になり
心苦しかった……

「白ちゃん!見て見て!」

砂希の指さした先、私の机の上には
星のペンで描かれた
少し歪なうさぎの絵に吹き出し……そこには
「白ちゃん元気ないぞ!」と書かれていた

私は空かさずクマのラクガキで応戦して
「元気MAXだぞ!」と書いた

そんな何気無いやりとりが私は好きだった。

だけど……
楽しいはずの毎日は、少しずつ…少しずつ
喉に小骨が詰まった時のような違和感を
つくりはじめていた。

一人の人に幸せが訪れた時
一人の人が不幸を背負う

今この瞬間生まれてくる命があって
消えゆく命がある
それが人の運命なら

この頃の私には
流されることしかできなかった……

それが、罪だというのなら
この世は罪人だらけの世界だろう……

3人で仲良くしたい……
そんな気持ちは声に出さなきゃ永遠に
誰にも届くことはない

それから、3人の溝は深まっていった……

無題1479

………続く………